



正しい歩き方には下ごしらえが大切だ。あとは、余計なことはポンと忘れ自然のリズムに合わせて。そうすれば、階段もハイヒールだって怖くない。
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内股やガニ股にならないようにとか、背筋をピンと伸ばそうとか、目線を上げようとか。なかには、テレビで「歩幅を10センチ大きくするだけで代謝がよくなる」とやっているのを見て、心がけている人もいた。
正しい歩き方といった場合、何かと気にしながら歩いている人は少なくない。理想のフォームがあるのかと思いきや、さにあらず。『医者に「歩きなさい」と言われたら読む本』(池田書店)などの著書がある元プロトライアスリートでウォーキングコーチを務める青山剛さん(44)は、「自然のリズムに合わせて歩けば大丈夫」と話す。
「歩いている時にあれこれ余計なことを考えるとリズムが崩れてしまう。基本的に歩いている最中は、無理にフォームを直そうとしてはいけません。余計なことはポンと忘れて自然のリズムに合わせて歩けばOKです」
大事なのは、下ごしらえ。正しい立ち姿勢とエクササイズだという。
正しい立ち姿勢とは(1)安定している、(2)楽である、(3)持続できる──これら三つの条件を満たしていること。
「いわゆる『気を付け』の姿勢はNG。苦しくて同じ姿勢を維持できないから『休め』がある。正しい立ち姿勢のイメージは『骨で立つ』感じ。この姿勢を基本に、重心を少しだけ前に崩していくと、ウォーキングの正しい姿勢が出来上がります」
一方、エクササイズは、大きく肩を回したり、肩甲骨を上下に動かしたり、首や腰を回したり。こうしたストレッチを1回につき2、3分でいいから日に数回はスキマ時間にコツコツやっておくことが重要と説く。
「いつ何をやるかと決めないで、例えば、デスクワークをしている時に肩の上げ下げを5回、首左右ひねりを5回するだけで、背骨と肩甲骨がリセットされます。人の体は12週間でワンサイクルするようできています。正しい姿勢とエクササイズを12週間続けると、正しい歩き方ができるようになります」
正しい基本姿勢ができたら、あとはその姿勢を維持しながら歩くだけ。その時のポイントになるというのが「腕の動き」だ。
「ポイントはひじを後ろに引き、三角形をつくるよう意識すること。前に出すことは気にしないでかまいません。すると肩甲骨が動いて背骨が回転し、その回転力が骨盤に伝わり足が振り出されます」
つまり肩甲骨、背骨、骨盤という体幹を主導として手足を動かすことが大切だという。
「肩甲骨が動かなければ、足に負担が集中するので『前ももが痛い』『膝が痛い』といった弊害が生じる。痛みが出てくれば、それをかばおうとする動作が働いて、さらにフォームのバランスが崩れ、今度は別のところが痛むようになります。そうなると歩けば歩くほど悪循環になってしまいます」