ボクシングの世界では、デビュー戦のマッチメイクは重要かつ難題とされる。
【写真】格闘家では珍しい?“アンチ”が少ないファイターといえばこちら
まもなくデビュー戦を迎える那須川天心の場合も同様。決定カードには業界内外から驚きの声が上がった。
数多くの試合を見てきたJBC特命担当事務局長・安河内剛氏に、「ボクサーのデビュー戦が持つ意味」を聞いた。
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「コミッションの立場なので勝ち負けは関係ありません。ただし今後に向けて天心のポテンシャルには大きく期待します。また与那覇がそれをどうやって迎え撃つのか。もしくは倒すのか。ボクシングの醍醐味、全てが入った試合になりそうです」
那須川天心のボクシング・デビューが近づいてきた。4月8日のバンタム級6回戦で向き合う相手は、日本ランキング4位の与那覇勇気(真正)。世間的注目を集める新人には、信じられないほどの強豪ボクサーがブッキングされた。
「『ここまで強い選手を?』と思う部分もあります。(与那覇は)アマチュアキャリアもあるしA級のハードパンチャーなので、かなり難しい相手。デビュー戦では安全策を取ることも定石。噛ませ犬とまでは言いませんが、地方や海外から無名や連敗中の選手を呼ぶパターンも多いですから」
「デビュー戦から『これはすごい』と思える選手は、ほとんどいません。緊張しますし不意のダウンなどがあったりもします。アマチュア時代にどれだけ凄い成績を残してプロ転向したボクサーでも同様。『デビュー戦ではこういうことはある』という感じで、誰もが織り込み済みです」
「世間の期待を下回れば、『大したことないな』という声も絶対に出る。またデビュー戦は緊張してしまい普段の精神状態ではいられない選手が多い。天心も格闘技(キックボクシング)では東京ドームのビッグマッチを経験していますが、パフォーマンスをどこまで発揮できるか気になります」
●与那覇勇気は最高の対戦相手
ボクシング業界では「さすが帝拳ジム」という声ばかりだった。自ジム選手に勝たせたい気持ちがあるのは当然だろうが、プロの姿勢を貫いた。興行としてしっかりしたカードを提供する、プロモーターとして質の高さを感じさせた。
「かなり苦慮した、と聞きました。天心という世間的にも知られるビッグネームですが、B級デビューなので危険を犯せない部分もある。対戦相手の質について十二分に吟味する必要があったのは、想像に難くありません」