●超一流の商品(試合)の提供が求められる

「本物の選手」ならば甘やかすことなく育て上げる。選手自身のレベルが上がるのはもちろん、結果的には興行としての成功を収めることにつながる。

「デビュー直後は格下相手と試合を組んで慣らしていく場合がほとんど。しかし帝拳・本田明彦会長はプロモーターとして良い意味で異質な方です。村田諒太の時もそうでしたが、周囲が納得、満足するカードを組む。期待選手が格下相手のベストパフォーマンスをしても、誰もが満足しないはずです」

「最近はファンの方々も、勝敗だけではなく質を求めています。メディア媒体も同様です。近年はAmazonさん、NTTドコモさんなどが放送してくれます。超一流の商品や顧客サービスを提供している世界的企業です。常に良いものを提供したい、という姿勢がある。ボクシングにもそこが求められるようになっています」

「従来まではマッチメイクが偏ってしまうこともありました。でも世の中が変わりプロモーターも変わってきた。『自ジムの選手を勝たせれば良い』だけではダメになった。『村田vsゴロフキン』(2022年4月9日、9回TKOで村田は敗退)も有利とは思えなかったが、誰もが見たい試合を実現していただきました」

●プロは儲ければ良いのか

 マッチメイクにおける対戦相手の選択に関しては、JBCに大きく関わる問題も存在する。JBCが判断、決定を下す「招請禁止選手」にも大きく関わるからだ。

「タイの選手に多いのですが、本国での成績は良いので日本での試合を許可するが試合では実力が伴わない。例えば、7戦7勝5KOでタイでのランク1位なのに、4回戦並みのレベルでKO負け。試合自体の質も下がるし、安全面でも非常に問題があります」

「海外では戦績を積み上げ実績を作ることを大事にしている場合も多い。毎週のように試合があり、年間10勝くらいできるシステムもある。JBCは各国の公式記録をもとに試合許可の判断をします。莫大な選手が来日するので映像までは確認しません。そうなると実際に選手のレベルが低過ぎるということも起こります」

「JBCのホームページを見れば、どれだけ多くの選手が招請禁止になっているかわかります。これは海外のローカルコミッションの衰退も関係しています。簡単に自国で戦績の積み上げができる。結果、来日したら酷いレベルで日本人選手と試合にならない。これでは日本ボクシングの衰退にもつながります」

 コロナ禍が収束に向かいつつある中、国内のボクシング興行の数は増えている。業界全体が右肩上がりになりつつあるが、そこでも「招請選手」の問題が出てきているという。

「興行が増えていることで国内選手が足りなくなり、海外のレベルの低い選手が国内で試合を行う。またタイ選手に関してはフィリピンや韓国選手に比べてビザが取りやすいのもある。そういった形態が日本の小規模プロモーターを支えているのも事実です。今後はそういった形を是正しないといけません」

「ボクシングはプロ興行ですが、一方では競技スポーツなので公平さが絶対的に必要です。『プロは儲ければ良い』という考えもわかりますが、ボクシングの根本を考えるのがJBCです。質の高さを重要視していきたいです。勝たせる、儲けるだけの興行がナンセンスになる日を望みます」

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