AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
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20年以上のキャリアを積みイギリスを代表する女優にまで上りつめたが、現在まだ34歳。キーラ・ナイトレイは、「『ベッカムに恋して』はスポーツ好きの私にはぴったりの役で、その後『パイレーツ・オブ・カリビアン』も、当時の自分がやりたい役だったし。その時々で自分が欲する役をやってきた」と語る。
5歳で俳優になると宣言、夢に突進し続けてきた彼女の新作は、100年前のフランスに生きた奔放な女性作家の半生を描く「コレット」だ。
「情報があるから架空の人物を演じるよりずっと簡単だった。最も役に立ったのは小説『クロディーヌ』よ。本人が書いた作品は、他人が書いた記事などよりずっと参考になるの。古風な小説ではあるけれど活力にあふれ、行間から彼女の声が聞こえてきた」
英国人の彼女がフランス人女性を演じる。その点について「人間どこに住んでいようと、どの時代に生きていようと、内にある感情的な景色に変わりはないと思う。彼女の内部で何が起こっているかという点に惹かれ、この役をやる気になったの」と語る。
田舎の自然を愛しのびのびと育ったコレットは、20歳で14歳年上の人気作家ウィリーと結婚した。彼女の文才に気がついた夫は、妻に小説を代筆させた。こうして生まれたのがベストセラー『クロディーヌ』シリーズ。当時フランスでちょっとしたブームを巻き起こした。
「夫は作家の才能に欠けたかもしれないけれど、ブランド化やセールスに長けており『クロディーヌ』を成功させた。世界の文化の中心地であるパリで、二人はセレブだった。セレブは現代のみの現象ではなく、100年前にもあった現象だという点に興味が湧く」
夫の浮気もあり、夫婦不和が生じ次第に彼女は作家、芸術家としての自意識に目ざめ、自立を欲する。
「彼女は夫との関係において犠牲者になることを拒んだの。彼のもとにとどまったら自分は犠牲者になると気がついた。その彼女の強さに惹かれるわ。コレットは生きたいように人生を生きた人。非常に自然な人だったと思う。常識や決まりに従うことがなかった。ベル・エポックと呼ばれた当時のフランスは創造的な時代で、文化的、社会的にも新しい観念が爆発した時代。それで彼女は自由に生きることができたのではないかと想像する」