令和時代を迎えたいま、安定的な皇位継承がますます急務になっている。皇室典範の現行制度の限界が浮かび上がるが、それ以前にもっと大切なことがある。長年の取材経験を持つ皇室ジャーナリスト3人が語った。
●座談会参加者
久能靖さん:元日本テレビアナウンサー。数々の報道番組を担当。「皇室日記」のキャスターを長年務めた
近重幸哉さん:「女性自身」皇室担当記者。長年皇室取材を担当。著書に『明仁天皇の言葉』など
山下晋司さん:元宮内庁職員・元「皇室手帖」編集長。現在はBSテレ東「皇室の窓」監修など
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──皇位継承については、皇嗣である秋篠宮さまが「兄が80歳のとき私は70代半ば。それからはできない」と周囲に語ったという報道もありました。皇位継承権があっても、年齢が近ければ、継承していくことは難しそうです。
山下:そうです。秋篠宮殿下がどうお考えになるかというより、制度に限界がきている、という問題でしょう。現在の制度は、明治時代に考えられたもので、天皇は終身であり、皇位継承順位は機械的に決まるというものでした。上皇陛下のご退位で、制度の根本が崩れたと考えています。戦後、大慌てでつくった皇室典範の抜本的な改正をこれから進めなければならないと思います。
久能:戦後、新憲法と新しい皇室典範を作った際、議論が十分ではありませんでした。それに、当時は現代のような長寿社会が来るとは誰も予想していなかった。現代社会のありかたに対して、現行の皇室典範には矛盾が多すぎます。皇室典範全体を見直す必要があります。本来、昭和天皇が87歳までお務めになった時点で考えるべきことでした。
近重:少子化についても、当時はまったく考えられていなかったですよね。
山下:制度疲労を起こしていますよね。これから50年は通用する制度を、考えるべきだと思います。小泉政権の05年に議論されだしてから、この議論は出てきては立ち消えになっていますが、今回もそうなる恐れがあります。仮に国民投票を行えば、すんなり「女性」「女系」と決まるかもしれませんが、天皇陛下や皇室の方々はどう考えておられるのか。それがわからないので、私はずっとモヤモヤを感じてきました。天皇家の存続の根幹に関わることなのにその家の人の意見を聞かず、国の組織で決めて、国民はすっきりするのか。