角田:確かに里沙子の夫は里沙子に対してモラハラ気味なんだけど、それはもしかしたら里沙子の受け取り方かもしれなくて。
柴咲:それ、毎回思っていました。このセリフってモラハラとも取れるけど、旦那さんが「君のことを分かっているよ」という示しでもあるな、と。
角田:本を書くときに意識したのが、「どうとでも取れる言葉」だったんです。たとえば「お前、バカじゃないの?」という言葉だったら、100人が100人、「バカにされた」と思うけど、「きみはホント、バカだなあ」ともっと愛のある言い方であれば、「バカと言われた」と取る人もいれば、「愛してる」と言われたと取る人もいる。
柴咲:ちょっと体調が悪かったり、ネガティブにとらえる時期だったりすると、かけられた言葉をマイナスに捉えちゃいますよね。里沙子は毎回、悪く取り続けちゃったんですね……。
角田:さらに里沙子の場合、友だちにも遠慮して会えないじゃないですか。そういうときに、10分でもいいから会ったり、一緒にご飯食べたりしてくれる女友だちがいると違う。「バーカ、バーカ」と言い合っているだけで気分が変わる。
柴咲:そうそう! 「ひどいね、旦那さん」と自分の代わりに言ってくれるとか。女性は共感してもらえたというのが喜びになったりしますしね。私は、孤独が好きだし、実際に孤独だとは思うんです。でも少ないけれど友だちはいて、お茶をして、他愛のない話ができる。「最近ちょっと仕事でうまくいかなくて」と言える人がいるかいないかは、大きな違いですよね。本音でつきあえる友だちがいるというのは救いです。
角田:友だちに子どもができると、独身の人もお互いに遠慮して、距離ができてしまうことがあるように思うんです。その距離を超えられる関係だといいんですけど、躊躇する間に離れて、孤立していくこともあるかなと。
柴咲:子どもがいると、どうしても子ども中心の会になりますからね。大人だけなら、そこで悩み相談もできるかもしれないけど……。難しいなと思います。最近思いますけど、鬱々としている人は増えてるだろうな、と。たとえばインスタなどで「映え」という言葉ができたように、スポットライトが当たる場所が増えた。ということは、影も濃くなっているはず。