ラグビー登山家として世界に25カ国・地域の山頂に「トライ」している、元システムエンジニアの長澤奏喜さん。ラグビーワールドカップを登山でPRしたいという想いから、勤めていた会社を退職。登山初心者からの挑戦が始まった。
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9月に開幕するラグビーワールドカップ(W杯)日本大会のエンブレムは、ダイヤモンド富士がモチーフだ。IT企業のシステムエンジニアだった長澤奏喜(そうき)さん(34)はこれを見たとき、富士山頂に「トライ」しているように感じ、ひらめいた。
「ラグビーボールを持って登山し、山頂にトライすることで、エンブレムの物語を作り出せる」
長澤さんは元ラガーマンで、学生クラブ選手権では日本一も経験した。ワールドカップの日本開催が決まってからは、その盛り上げに一役買いたいと考えていた。そんななかでひらめいた「山頂へのトライ」。ワールドカップ出場経験があるのは世界に25カ国・地域。そのすべての最高峰にトライすれば、自分だけの方法でワールドカップをPRできる──。
普通ならば空想で終わる思いつきを、長澤さんは実行に移してしまう。2016年12月に家族の大反対にあいながらも、仕事を辞め、17年3月には「ラグビー登山家」を名乗ってヨーロッパへと飛んだ。家族も友人も同僚も、ポカンとするか反対するか。賛同してくれる人はいなかったという。それでも、「これは絶対におもしろい」という確信と情熱があった。何がそこまで長澤さんを突き動かしたのだろうか。
「W杯を盛り上げたいという思いはもちろんですが、自分がどこまでできるのかを試したかった。そして、たった一人でもこれだけのことができるんだと証明したかったんです」
服装はラグビー日本代表のレプリカユニフォーム。登山開始から山頂まで基本的にラグビーボールを持って登る。ラグビーのルール「ノックオン」を模して、ボールを前に落としたときは10メートル戻ってスクラムの姿勢を取ってから再スタートする。山頂にボールを接地させて「トライ」すれば成功だ。