痛くて恥ずかしくて、泣き叫びながらたたかれ続け、終わると親が「これは愛なんだ」と抱きしめてくる。そんな日常だった。
高校時代、教師に勇気を出して打ち明けたところ、教師はこう答えた。
「いいご両親じゃないか」
親に対する思春期のよくある悩みとして、片付けられてしまった。手塚さんの孤独感は、より深まったという。
だが、回答からは教育とも愛情とも受け取れない虐待の状況が伝わってくる。
「集会中に子どもたちが次々と引きずってトイレに連れていかれ、泣き叫ぶ声が聞こえてきていた」
「(集会で)子どもがむちを打たれる音と、口を押さえられてくぐもる泣き声うめき声が響き渡っていたが、『親子ともに頑張っている』と称賛されていた」
「王国会館にむち打ち専用の『懲らしめ室』があった」
「親同士でどのむちが一番効き目があるかを相談していた」
個々人の特別なケースでは決してなく、調査には、上記と同じような経験をした回答が多数寄せられている。そして、これらの行為を幹部らが正しい行為だと推奨し、親たちに勧めていたとの回答が目立った。
綿和さんもこう証言する。
「幹部が虐待を推奨するだけではなく、親同士も、より痛みを感じる道具について、あれがいいこれがいいなどと情報を交換していました。なかなか想像できないと思いますが、むち打ちは本当に痛いんですよ。私も片方のお尻がみみず腫れになって痛くて、授業中は体を傾けていすに座っていました」
もっとも問題なのは、幼少期の虐待によって元2世信者らが大人になった今も精神面で深刻な問題を抱えているという現実である。
調査に対し、むち打ちを「された」人の「人格形成にネガティブな影響があった」という回答は約74%。半数以上が「精神的な後遺症がある」と答えている。
その詳細を見ると、
「親が高齢になり助けを求めてきたら復讐(ふくしゅう)したい」「そのうち親を殺してしまいそうだ」という怒りに支配されるケース。
「自分が何者なのかわからない」「愛されているということの意味が理解できない」などの虚無感。
「ふとしたときに死にたくなる」などの自殺願望を抱く人。「うつ病で精神科に通院している」など、うつ症状の回答も約40あった。むち打ちのシーンがフラッシュバックしたり、不眠に苦しんでいたりする人も多かった。