成功して富を得た若者が露骨に金持ち自慢をするというのは、YouTuberの世界ではそれほど珍しいことではないかもしれない。しかし、お笑いの世界では後藤のやり方はすさまじく不評だった。
バラエティ番組でその話をしても先輩芸人や共演者からの反応も良くないし、あまり盛り上がらない。その上、もともと四千頭身の笑いを理解できない視聴者からはますます反感を買うことになった。のちに後藤自身も「全部間違ってました」と振り返っている。
そして、第七世代ブームは終わり、四千頭身をテレビで見かける機会も減っていった。そんな中で、ブーム終焉を改めて印象づける出来事があった。3月21日放送の『ぽかぽか』(フジテレビ)で、後藤が「先月の給料がついに家賃を下回りました」と告白したのである。
よくよく聞いてみると家賃が31万円だったということなので、家賃が高すぎるからそういう事態に陥ったとも言えるわけだが、一時期の勢いからすると月収が31万円を切っているという事実は衝撃的である。後藤は交際中の彼女との同棲を解消して、高級マンションを引き払い、埼玉の実家に引っ越すのだという。
そんな事態に陥った理由を問われると、後藤は「そうですね、需要がなくなったのかな」とはっきり答えていた。
第七世代ブームの渦中では、四千頭身の需要の大半は「いま話題の人たち」というところにあった。だからこそ、ブームが過ぎ去ると、本人たちの立場も一気に危ういものになってしまったのだろう。
もともと彼らのことを「いけ好かない若者」ぐらいに思っていた人たちからは、ここぞとばかりに批判の声が高まっているが、そこまで叩かれるほどのことはしていないのでは、と個人的には思う。そもそもブームの時期の人気の加熱ぶりが異常だっただけで、彼ら自身は一貫して地に足のついた活動をしてきた。
最初の頃はネタ作りをする後藤だけが目立っていて、残り2人はお荷物キャラのイメージがあったが、現在では都築が個人でラジオ番組をやっているし、無口な石橋はサッカー、料理、筋トレなどの特技を生かし、後藤よりも高い収入を得ているという。
トリオとしても『有吉の壁』(日本テレビ)に出演しているし、打席が回ればきちんと結果を出している。現状も決して悪くはない。
そもそも後藤が「先月の給料がついに家賃を下回りました」と言ったこと自体が、自分の状況をよく見えている証である。
この発言があったのは、自分の発言が生放送中にネットニュースになったら賞金がもらえる「芸能人春のご報告記者会見」という企画である。後藤の発言は実際にネットニュースになって、大反響を巻き起こした。
自分の発言をネットニュースにするという趣旨の企画の中で、目論見通りの結果になったのだから、やはり彼のアンテナは錆びていない。皮肉にも、ネットニュースを見てSNSなどで四千頭身をバッシングする人こそが、彼らの感度の高さを証明してしまっている。
このふるまいを見る限り、四千頭身は時代を見る目がないトリオではないし、芸人として先がないわけでもない。ブームという追い風なしでどこまで走れるのか、彼らの真価が問われるのはここからだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)