私は政治家としてずっと「日本の原発は安全だ」という話を信じてきた。原発は「安全」で「コストが安く」「クリーンなエネルギー」だと聞いていた。これが経済産業省や電力会社、研究者など原発推進論者のスローガンだった。ところがあのような事故が起き、故郷を追われて逃げ惑う人々を見て、原発推進論者が言っていたことに疑問を持った。当時私は政界を引退(09年)し、のんびり過ごしていたから、勉強をしなきゃあいけないと思い、原発の本を数えきれないほど読んで勉強した。すると読めば読むほど、原発推進論者が言っていたことはウソだとわかった。

──しかし、政界を引退してから「原発ゼロ」と言い出すのは、無責任。批判されても仕方ないのではないでしょうか。

 批判はあるよ、反省する。しかしウソとわかって黙っているわけにはいかない。孔子の『論語』に、「過ちを改むるに憚ることなかれ」という言葉がある。この言葉通り、過ちを認めて「原発ゼロ」にしないといかんと切り替えた。

──原発をなくして、経済は発展しますか。

 発展する。原発ゼロで日本は困らない、むしろ発展できる。日本は太陽光や風力、水力、地熱といった自然エネルギーに恵まれている。今は蓄電技術が発達して、すでに日本は水力発電を加えた自然エネルギーの割合は15%近くにまでなっている。これは原発15基分の発電量に相当する。

 これからどんどん自然エネルギーに参入する企業が増えればコストも安くなり、地産地消が進んで地域も発展する。自然エネルギーで安心して経済成長できる社会を作り上げれば、必ず世界が見習う。そうすれば世界をリードできる。

 原発は逆だね。原発1基つくるのに、事故前は5千億円近くかかるといわれていたが、今は安全対策も厳重にしないといけない。新設したら1兆円以上かかるという。しかも原発は「トイレなきマンション」といわれるように、日本には核のごみの処分場がない。

(編集部・野村昌二)

AERA 2019年3月18日号より抜粋

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