浪江に来て気づいたことがいくつもあった。丁寧な暮らし、人に対する気づかい、優しさ、たくましさ、弱さ……。訪問した時にさりげなく出してくれる漬物にも心配りを感じる。
「高級なお菓子より、その家のお母さんが漬けた白菜の漬物のほうが本当にうれしいし、『来てくれてありがとう』という気持ちが伝わります」
仕事は1年ごとに契約更新。将来は?
「ぜ~んぜん、わかりません」
とおどける。
だが、住民たちの話を聴いた者としての責任はある。話してくれた言葉を大事に、次につながる取り組みを一つでも起こしていけたらと話す。
「この町を好きと思っている人たちと、一緒に町づくりができたらいいな」
一歩一歩、「新住民」によって福島は前に進む。(編集部・野村昌二)
※AERA 2019年3月4日号より抜粋