

タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
【婚姻の自由を求めて提訴した同性カップルら原告団が、都内で記者会見した】
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夫とは3年間同棲したのちに結婚しました。なぜ結婚したかというと、人前に出る仕事をしていた私が、二人で出歩くたびに人目を気にするのに疲れたから。結婚すれば気にしなくてよくなると思ったんです。「法律で認められた関係」なら堂々としていられると。それが2000年のこと。
当時の私は結婚イコール法律婚という発想で、身近に事実婚をしている人もいませんでした。名字が変わるのも面白かったし、子どもを持ったときも特に何の苦労もせず手続きをしました。
でものちに結婚した私の友人は夫婦ともに名字を変えたくなかったため、事実婚を選びました。子どもを持った時の手続きがとても大変だったと話していました。
さらに別の友人は、好きな人が同性なので、望んでも法律婚を選ぶことができません。
私はたまたま名字を変えることに抵抗がなく、パートナーが異性だったので当然のように手にできた法的な権利が、友人たちには認められません。
いま家族と住んでいるオーストラリアでは、事実婚カップルもDe Factoという形で法的に認められています。ただし、Marriage(婚姻。日本と違って夫婦は同じ名字でなくてもいい)の届けをした夫婦に比べると関係性の証明などに手間がかかることがあります。以前は同性カップルはDe Factoしか選べなかったのが、17年に法改正されてMarriageを選べるようになりました。前駐日大使のブルース・ミラー氏も豪州に帰国後、長年のパートナーの日本人男性と結婚しています。
カップルによって望むつながりの形は違います。最近、私の周りでは「果たして法律婚はカップルにとって最適解なのか?」となぜか育児中の働く女性たちが口をそろえて言い始めました(詳しくは別の機会に)。
事実婚か婚姻か、別姓か同姓か、異性か同性か。パートナーシップのあり方は人それぞれで、関係は時とともに移ろうものでもあります。だから選択肢は多い方がいいし、それが祝福される世の中であってほしいと思います。
※AERA 2019年3月4日号