明石市で1歳の女の子を育てる看護師の女性(40)は、今年の1次選考で落ちた。明石市に住んで約12年。上に14歳と10歳の息子がいるが、次男までは申し込むとすんなりと入園できたという。

 だが、3人目では点数が「満点」に近くても落選。「無償化の影響は確実にある」と女性は感じている。無償化が開始された3年ほど前から、田んぼがどんどん整備されて住宅地が拡充された。医療費や保育料が安くなるという理由で、隣の神戸市から移ってきた人が多くいるという話も聞く。女性は「無償化自体は賛成だ」としたうえで、不満もあると話す。

「無償化を目当てに引っ越してきた人が保育園に入れて、明石市でずっと子育てしてきた人が入れないというのは、やはり不公平を感じます。市には人を呼ぶのなら、きちんと整備も進めてほしいと言いたい。無償化で、市が掲げる『子育てしやすいまち』から逆に離れてしまった部分もあると思います」

 大阪府の守口市でも17年4月から0~5歳児の保育料完全無償化を実施したところ、同年4月の認定こども園の申込者数は前年比で約4割増となった。

 先行した自治体と制度設計が違うとはいえ、この「無償化」が、10月からは全国で実施される。前出の普光院さんは、無償化の「波」は来年度以降の保活に大いに影響するだろうとみる。

「子ども・子育て支援制度が本格的に実施された15年4月もそうでしたが、保育関連のポジティブなニュースが多く流れる年ほど、翌年の申込者数が増えるという相関関係があります。今年の夏には参院選もあり、政府の目玉政策である『幼児教育・保育の無償化』はよりアピールされる機会が多くなるでしょう。今後、保活がさらに激化することは十分に考えられます」

 聞こえのいい政策だけ進めて、受け皿の整備が追いつかなければ、混乱を引き起こすことは間違いない。(編集部・作田裕史)

AERA 2019年2月25号より抜粋

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