幼い子は目のかゆみを我慢するのが難しく、夜なかなか寝付けなかったり、夜中に起きてしまったりして、日中の活動にも影響してしまう(撮影/写真部・松永卓也)
幼い子は目のかゆみを我慢するのが難しく、夜なかなか寝付けなかったり、夜中に起きてしまったりして、日中の活動にも影響してしまう(撮影/写真部・松永卓也)
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 花粉が飛散し始める時期と受験シーズンが重なる。受験で実力を発揮できないのではと親も悩ませる深刻な問題だ。ただ、大人に有効な治療の対象年齢が昨年から引き下げられ、生まれる前にアレルギー体質を防ぐ研究も進んでいる。

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 6歳の娘が3年前から花粉症に悩む都内の女性(38)は嘆く。

「3、4歳の頃ははなもうまくかめず、目薬も嫌がって苦労しました。天気が良くても外遊びもできず、本当にかわいそうです。なにより、この子がこれから何十年間も花粉症に悩まされると思うと不憫で……」

 花粉が飛び始める時期は受験シーズンでもある。鼻づまりやくしゃみで試験に集中できなかったり、眠れなかったりして力が発揮できなくなる恐れもある。何か対策はないのだろうか。

実は、スギ花粉を体内に取り込むことで体を慣らす「舌下免疫療法」の対象年齢が昨年6月、12歳以上から5歳以上に拡大された。都内に住む会社員の女性(39)は、さっそく5歳の娘を小児科に連れていき、血液検査でスギ花粉への抗体を確認した後、舌下免疫療法をスタートさせた。

 女性自身も、高校時代から花粉症で頭痛や鼻水に悩んでいたが、3年前に舌下免疫療法を始めて症状がほぼなくなったことから、娘にもいつか受けさせたいと思っていた。薬の適用が5歳以上に拡大されたニュースを見て、すぐ小児科に相談した。

 1日1度、錠剤を舌の下に入れてから飲むだけだが、花粉症のない時期に毎日欠かさずに飲ませるのは意外に大変だ。ようやく治療後初めての春を迎える。効果が出るのか楽しみだ。

 有明こどもクリニック理事長の小暮裕之医師のもとにも、舌下免疫療法を行っている子どもたちが通っている。

「小さいうちから花粉症を発症するお子さんは、花粉への感受性が高く、治療しないままでいると重症化することもあります。舌下免疫療法は実際にスギ花粉の抗原を体に入れる治療なので、重症度が高い人ほど、副作用が出る可能性があります。症状が年々ひどくなる前に、早めに始めることをお勧めします」

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