生まれる前に、アレルギー体質になるのを防ぐ研究も進められている。
国立成育医療研究センター研究所の斎藤博久所長補佐と森田英明アレルギー研究室長らの研究グループは18年11月、妊娠中に薬を注射することで、生まれてくる赤ちゃんのアレルギー発症を予防できる可能性をマウスで確認したと発表した。
研究グループが着目したのは、胎児期と新生児期に体内でIgE抗体を作る特殊な細胞「膜型IgE陽性B細胞」だ。この細胞がアレルゲンと結びつくとアレルギー症状を起こすIgE抗体が大量にできる。
実験の狙いは、薬剤によってこの細胞を攻撃し、IgE抗体を作らせないこと。妊娠中のマウスに薬剤を投与したところ、生まれた仔マウスの体内でほとんどIgE抗体が増えなかった。薬剤が胎盤を通じて胎児に届き、「膜型IgE陽性B細胞」を排除した可能性が高いという。
接種した薬は重症のぜんそく患者向けの薬「ゾレア」。すでに妊娠中の患者にも投与されているもので有効性も安全性も確認されている。今後、人間の赤ちゃんのアレルギー予防に効果があるか検証が進められる。
ただし、この方法で予防できる可能性があるのは生後数カ月で発症するアトピー性皮膚炎や食物アレルギーで、花粉症への効果は期待できない。斎藤所長補佐によると、妊娠中に投与した薬の効果は生後4~5カ月ほどで消滅してしまうため、遅れて出現するスギ花粉の感作の時期までは効果が続かないという。ただ、森田室長はこう語る。
「生後すぐにアトピー性皮膚炎や食物アレルギーになると、その後にぜんそくや花粉症など次々とアレルギーを発症しやすくなります。アレルギー体質獲得を抑えることで、負のループを止められるかもしれません」
アレルギー分野では、研究が進むにつれ、ここ数年でこれまで「常識」とされてきたことが次々と覆されてきた。花粉症の発症が予防できる日も、くるかもしれない。(編集部・深澤友紀)
※AERA 2019年2月18日号より抜粋