この男性の学童のように、現状では必要に応じて、基準以上に職員が配置されているところもある。それが今回の基準緩和で一気に変わることはないだろうというのが厚労省の見方だ。ただ、今でもギリギリなのに、「緩和」という流れで、基準がない時代に逆戻りしては困るという声が現場では多かった。

 職員配置基準の緩和だけではなく、待機児童が多い地域では受け入れ枠を増やす動きもある。他にも、放課後の子どもの居場所として、親が共働きでなくても広く利用できるような仕組みを整えようという動きもある。

 子どもが増えて職員の加配が難しければ、子どもに目が行き届かなくなるのが心配だという保護者もいた。長女が1年生で、都内で働く40代の女性は言う。

「保活で苦労したので、学童まで入れないのは困る。学童の枠を増やすのはありがたいのですが、子どもが増えるとその分、保育の質が心配です」

 2人の子どもを学童に通わせてきた千葉県の女性も言う。

「職員の割合が少ないと、間違った指導があっても止められないのが怖いです」

 子どもたちに寄り添うため支援員になったのに、ままならない現場に、前出の都内の男性支援員はジレンマを感じる。

「他の子をいじめたり暴れたりして邪魔者扱いされる子がいますが、本当は誰より支援を必要としているのはその子です。でも現状は職員の手がまわらないから、毎日叱られて最後は学童から追い出されてしまうこともある。そういうのが一番つらいですね」

 子どもたちが放課後の時間を過ごす学童を、もっとくつろげる場にしたい。職員たちの思いを生かせる制度や環境が必要だ。

(ライター・大塚玲子)

AERA 2019年2月11日号より抜粋

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