「新しい地図」でソロとして活動を始めて1年、俳優の稲垣吾郎さんがAERAに登場。現在の心境や、今後の活動についての想いを聞いた。
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撮影では1カット1カット、ポーズを決めていく。2017年に「新しい地図」のメンバーとして再出発した稲垣吾郎だが、相変わらず「カッコイイ吾郎ちゃん」だった。だが、映画「半世界」で演じるのは、オシャレとは無縁の炭焼き職人。なぜかしっくりくる。
思えば、最初に稲垣の演技に衝撃を受けたのは、映画「十三人の刺客」(2010年)の暴君・松平斉韶。人を平気で切り刻む狂人っぷりに戦慄。見る者に自然と「こやつを倒すしかない」と思わせる迫真の演技だった。
そんな暴君だけでなく、名探偵、天才ピアニスト……と、自身でも「天才的な人物を演じる機会が多い」と話すほど、突出したキャラクターを映画や舞台、ドラマで演じてきた。
「経験として大きかったのは、つかこうへいさんの舞台『広島に原爆を落とす日』(1997年)です。劇団☆新感線のいのうえひでのりさんが演出で、演劇のこと、舞台のこと、役者として立ち位置もわからなかった僕に手取り足取り教えてくださいました。映画と舞台を比べれば、お客様が目の前にいるのといないのとでは、自然と表現方法や伝え方が違ってきます。でも、どちらにしろ僕が芝居が好きなのは変わりません」
当然今後の活動も「俳優業が中心ですよね?」と尋ねると、意外にも、「僕はただ、『求められることをやる』ことだと思っています」ときっぱり。もちろん、主体性がないということではない。
「ありがたいことに応援してくださる方がいっぱいいらっしゃる。僕はそういう皆さんのニーズに応えていきたい。それは昔も今も変わりません。だから、歌ったり踊ったり、俳優業以外のことでも『やってほしい』という要望があれば、僕はなんでもやりますよ」
第一線で走り続けてきた吾郎ちゃんだからこそ言える、力強い言葉に心が躍った。(フリーランス記者・坂口さゆり)
※AERA 2019年2月4日号