
エマニュエル・トッドほか著『2035年の世界地図』
※Amazonで本の詳細を見る
中国では、ネット通販大手アリババ創業者のジャック・マー氏や(アリババ集団傘下の金融会社)アント・グループに対する締め付けも強まりました。中国企業内に中国共産党の党員がいることが、以前よりはるかに多くなっています。これはすべて国家権力です。そして最後に、ロシアとウクライナの紛争と欧米の対応でも、中央銀行や民間資産の差し押さえなど、一層の国家権力の介入が見られます。数年前までは考えられなかった国家の力の劇的な増大を、ここ2~3年の間に目にした、と思います。
■ソーシャルメディアは民主主義にプラスの影響を与える
――民間部門にも目を向けると、パンデミックやロシアのウクライナ侵攻に際して、ソーシャルメディアなどのデジタルプラットフォームが果たした役割がかなり大きかったように見受けられます。あなたは、ソーシャルメディアの民主主義への影響について楽観的にとらえていますか。それとも悲観的に見ていますか。
私はソーシャルメディアについて、おおむね楽観的で、非常に良い役割を果たしている、と思います。
ソーシャルメディアの存在は、私たちがプライバシーをある程度放棄し、自発的に縮小させていることを意味します。多くの人にとって、具体的に自分たちが何を放棄しているのかはわからないことも事実ですが、少なくとも何かを放棄していることは知っています。
一方で、これらの新しいメディアは、私たちに情報を選択する大きな自由を与え、好きな意見を述べ、ある意味で本質的に世界市民になることを可能にしています。ですから、私はかなり楽観的に考えています。これらのメディアは、あなたがおっしゃった両方の事例で好ましい役割を果たした、と思います。パンデミックでも戦争でも、です。人々はもちろん偽情報やフェイクニュースなどに注目しがちではありますが、私たちは利点の半面には弊害も起こりうると想定しなければなりません。全体的に見れば、ソーシャルメディアの影響はプラスに働いてきた、と思います。