名古屋市郊外の古アパート。売ると決めてから実際売れるのに何年もかかり、時代の流れで価格もどんどん下がった(撮影/浅野裕見子)
名古屋市郊外の古アパート。売ると決めてから実際売れるのに何年もかかり、時代の流れで価格もどんどん下がった(撮影/浅野裕見子)
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突然亡くなった親の資産を調べる方法(AERA 2018年12月31日-1月7日号より)
突然亡くなった親の資産を調べる方法(AERA 2018年12月31日-1月7日号より)

 話し合わなければいけないのは分かっている。しかしなかなか時間が取れずに、親が突然亡くなってしまったら──。何をすればいいのか。

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 2000年5月。記者(女性、54)の両親は高速道路で事故を起こした。東京都内の私たち夫婦の家に滞在し、名古屋の自宅へ帰る途中だった。事故の翌朝、母が死亡。一命をとりとめた父も、搬送先の病院で8カ月頑張った末に他界した。両親とは口もきけないままお別れとなった。

 一人っ子の私はショックと心細さでパニックになったが、涙に暮れている暇などなかった。

 親がどんな保険に入っていたのか、どこの銀行に口座があるのか、さっぱりわからない。必要な情報と書類は自力で探すしかなかった。両親にはペット(犬1匹、2匹)がおり、不在中は近所の方に鍵を渡して世話を依頼していた。おかげでいつも以上に家の中は整理整頓されていて、探すのは難航した。

 探したのは不動産関係書類、保険証書類、実印、印鑑登録証明書、通帳、有価証券など。探し始めてすぐ盲点に気付いた。昭和ヒト桁生まれの母は、何でも取っておく人だったのだ。

 重要っぽい書類が次々出てくる。それを片っ端から精査するのだが、よく読むと、満期になった保険の証書だったりする。最初は何を見てもいちいち泣いていたが、あまりの無駄な書類の量に「思い出もたいがいにしろ」と思わず突っ込みを入れたくなった。

 近所に住む親族にヒアリングして、大事なものをどのあたりにしまっていたか、ある程度あたりをつけてから探せばよかった。古い書類の“鑑定”は慣れで克服した。目が慣れてくると、契約期間など必要なデータを即探せるようになるので判断するスピードは次第にアップした。

 決断は自分ひとり。これは一人っ子の宿命だ。夫も夫の家族も心理的支えにはなってくれるが、判断は私にしかできない。相続したのは親の家(土地・建物)と、名古屋郊外にある古いアパート(土地・建物、賃借人なし)。名古屋に移住するという選択肢はなかったが、すぐに売る気にもなれなかった。

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