未婚率の上昇や家族のかたちの多様化で、一人で人生の最期を迎える人が増える中、終活支援に乗り出した自治体がある。「私が死んだら夫の隣に」を叶えてくれる。
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これまで「自分のことは自分で」と頑張ってきた人も、誰の手も借りずに人生を終えることはできない。死亡届の提出や健康保険や年金の資格抹消、葬儀や火葬など自身の死後に多くの手続きがあり、それを誰かにやってもらう必要があるからだ(表参照)。身寄りがない人や、家族や親族が手続きを担うことが難しいケースが増える中、自治体による終活支援がここ3年で広がってきた。
先鞭をつけたのが、神奈川県横須賀市だ。人口約40万人のうち、65歳以上の高齢者が12万人を超え、高齢化率は30.0%と2017年の全国平均(27.7%)より高い。同市の引き取り手のない遺骨は90年代半ばまでは年間数柱だったが、ここ10年で急増し、多い年で年間50~60柱。ほとんどは身元が判明しているにもかかわらず、遺族の連絡先がわからなかったり、引き取りを断られたりしたもので、無縁納骨堂に安置される。読経などもなく、弔われない死者だ。
こうした無縁遺骨を減らそうと、横須賀市では15年7月に「エンディングプラン・サポート事業」を開始した。ひとり暮らしで身寄りのない、月収18万円以下などの条件を満たす市民が対象で、希望する市民は、市の協力葬儀社10社の中から選んで葬儀や納骨について生前契約を交わし、費用を預ける。金額は生活保護の葬祭扶助額に合葬墓などへの納骨費を加えた25万円で、市の職員は契約に立ち会うほか、定期的に安否を確認する。死後には希望通りに葬儀や納骨が行われたか見届ける。
この事業を中心となって進めてきた同市福祉部次長の北見万幸(かずゆき)さん(60)は、ある男性が残した書き置きを大切に保管している。15年1月に79歳で亡くなった後、自宅に預金通帳とともに残されていた。そこには、15万円しかないが、これで火葬し、無縁仏にしてほしいという内容が書かれていた。鉛筆で何度も字を練習した跡があり、必死な思いが伝わってきた。