認知症の当事者が社会参加をしながら「働く」ことで、少額でも謝礼を受け取るまでには、前田さんの国への粘り強い働きかけがあった。
介護施設は国の介護保険制度の給付を受けながら運営しているので、要介護(支援)者である人が、報酬を得ることは疑問視されていた。前田さんは、「社会の一員として働きたい」というメンバーたちの声を届けるために、厚生労働省と交渉を重ねて、制度の改善を訴えてきた。
11年から介護保険制度改正で、介護サービスを利用する人でも仕事ができ、対価を受け取ることが認められた。それが、BLG開設のきっかけとなった。
さらに今年7月下旬、厚労省は認知症の人向けのデイサービスなどに通う人が、利用時間内に地域で有償ボランティアに参加することが可能だとする通知を全国の自治体に出した。<利用者が役割を持ち、達成感や満足感を得て自信を回復するなどの効果が期待される>と、「働く」活動を後押ししている。
BLGの取り組みに共鳴した人が八王子、青森でも「働く」デイサービスを立ち上げている。
今年6月には神奈川県藤沢市で、認知症を抱えるデイサービスの利用者が、調理から接客まで手がけるレストランがオープン。利用者は売り上げの一部を報酬として得られるといった取り組みも始まった。(ライター・村田くみ)
※AERA 2018年11月12日号