「認知症は、誰でもなるかもしれない脳の病気です。覚えられない、場所や時間や人がわからなくなるといった症状が出ます」
濱名さんは昨日の夕食について、事細かに児童に尋ねていく。記憶がいかに曖昧で、残る記憶に多少の差はあっても、認知症の人とそこまで変わらないことを理解してもらうためだ。
「でも、うれしいことや悲しいこと、心に残る気持ちは覚えているんです」(濱名さん)
続くユマニチュードの講習では、木村真美校長と一緒に、当事者が心地よく感じる話しかけかたや触れかたを学んだ。
ユマニチュードの効果を視察して実感したという医師の荒瀬泰子福岡市副市長は言う。
「地域に高齢者が増えていても核家族化が進んでいます。身近に高齢者がいないかもしれない子どもたちにも、高齢者のこと、認知症のことを知ってもらい、認知症にやさしい街づくりを担っていってほしいと願っています」
福岡市は、児童・生徒向け、地域向けのユマニチュード講座を、今後も順次拡大する方針だ。25年度までには、福岡市内の全校区と全小中学校での実施を目指すという。(編集部・熊澤志保)
※AERA 2018年11月12日号より抜粋