九州でも活動を広めようと、仲間とともに14年に九州臨床宗教師会を設立。地震の2週間後には、会の仲間たちと益城町内の避難場所にテントを張り、カフェ・デ・モンクを開いた。

「不思議なもので、こちらが話を聞いているだけで、心が解放されたとか、ホッとしたと言われます」(吉尾)

 心がけているのは、その人のありのままを尊重すること。そうすることで、被災した人たちはここが自分の居場所だと感じて安心するのではないかと話す。

 地震から2年6カ月。今も、約2万6千人が仮設住宅などで暮らしている。先が見えず立ち止まったまま不安を感じている人も少なくない。吉尾は益城町などの仮設住宅と、昨年7月の九州北部豪雨で大きな被害を受けた福岡県朝倉市の仮設住宅も、仲間の臨床宗教師たちと一緒に定期的に訪ねている。吉尾は、自分が「人を救っている」とは考えていない。不安を抱える人たちの前に佇み、その人たちの受け皿となり、その人たちの人生がよりよいものになってほしいと願っているだけと話す。

「私たちはあなたたちを決して忘れていないというメッセージにもなると思います。被災された方が居続ける限り、通って関係を持ち続けたい」

(文中敬称略)(編集部・野村昌二)

AERA 2018年10月15日号より抜粋

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