力で人を支配するのはあってはならないことである。私が疑問だったのは、“上の人”は、人それぞれ違うタイプの人間に、なぜ同じ方法でコントロールしようとするのか?だ。ある程度大人になったらわかった。簡単だからである。言ってみれば時短。現場のオペを暴力で効率化する。こんな人を馬鹿にした考えもない。

「若い時の苦労は買ってでもしろ」と言う。つまり「理不尽を経験せよ」ということ。そういう愚かな考えが常識化して、とんでもないシステムを社会全体で支えてきた。こんな更新が止まった分野もない。早急なアップグレードが待たれる。私は画一的なパワーで人を支配するやり方に断固反対する。一人一人に合う指導法、教育、コミュニケーションを“上の人”は考えるべきなのだ。

 さて、一方、思い通りにならないことに対する耐性はどこで身につけたら良いのだろう。絶対にストレスにならない、でも「私」を成長させてくれる“手ごろな理不尽”はどこで買えばよいのか……。

※AERA 2018年10月8日号

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マキタスポーツ

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マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。子供4人。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである。』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。近刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)。『決定版 一億総ツッコミ時代』(講談社文庫)発売中。

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