広島県の直近の7月の有効求人倍率は2.14倍と、全国2位だ。ただ、単に仕事があるから移住ランキング上位に入っているわけではない。

 都内でプログラマーとして働いていた中村憲二さん(33)は、「たまゆら」など瀬戸内を舞台にしたアニメが好きだった。3カ月に1度程度「聖地巡礼」にくるうちに、移住を考え始めた。

「残業も多く、いつまでもプログラマーとして働くつもりはなかった。大好きな広島のために何かできないか考えました」

 ネックは仕事だった。広島でもプログラマーの仕事はいくらでも見つかるが、それでは東京と変わらない。前出のセンターに足を運ぶと、広島県のスタッフからファイルを渡された。表紙には「経営者から掘り起こした“とっておきの”求人一覧」と書かれている。いったい何なのか。広島県地域力創造課の山田和孝課長が解説する。

「広島への移住を検討している方の大半は30~40代で、どうせ地方では自分に合う仕事はないだろうと諦めている人も多い。逆を言えば、東京でのキャリアを活(い)かせる仕事があれば移住に踏み切れるのです」

 広島経済同友会の協力を得て、広島の企業116社の社長を一人ひとり訪ねた。そうして経営者から直接聞き出した求人情報をまとめたのが「とっておきの求人」だ。山田課長は、

「実際に社長にお話を聞くと、ハローワークなどに出していないような、新規事業に関する求人情報などを得ることができた」

 また、広島経済同友会・少子高齢化対策委員会の高木廣治委員長がこう続ける。

「企業の情報を出すだけではなく、東京の移住相談ブースに来た方の情報を、経済同友会の131社と共有するマッチングシステムも県と作っています。気になる人がいれば企業が面接を申し込むことができ、実際に採用に至った例も数あります」

 それをサポートするかのように、広島県では就職に向けた企業訪問などを目的とする東京圏(東京、千葉、埼玉、神奈川)の移住検討者を対象に、片道交通費を支援する制度も準備する徹底ぶりだ。

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