川崎さんは、言う。

「先祖さまが一生懸命守ってきた御前様なんですよね。何のために、何を考えて祈りをしてきたのか。それが、いったい何なのか私もまだはっきり見えてきません。でも、何かがあるからここまで一生懸命やってきたと思うんです。私もできる範囲内で何とか続けていこうかという気持ちはしています」

 舩原さんはこう話した。

「私自身にしても地域全体にしても、信仰は非常に大事なもの。信仰心によって地域が一つになってやってきたところもあるでしょうし、今もそうです。その信仰を継続していくことが求められていると思うし、引き続きやっていかんばいかん、そう思っています」

 世界遺産登録の決定は、祈りの言葉「オラショ」とともに先祖に報告したという。祈りを捧げる後ろ姿に、信仰を守り抜く静かな力強さを感じた。(編集部・野村昌二)

AERA 2018年10月1日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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