走るにはいい季節になってきた。「今年こそは」と考えている人もいるだろう。記録を伸ばすより、気分もよくなり健康になる「RUN」とは、一体どんなものか。
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ラブラブだった男女の仲が、憑きものでも落ちたように冷めることを「秋風が立つ」という。「秋風」を「飽き風」に引っかけた、古今和歌集にも出てくる太古のシャレだ。
一方、中高年ランナーのはしくれである自分の場合、秋風はいわば「飽きてないわよ風」。「こんな暑さのなか走るのは、体に悪い(ラッキー)」とサボりまくっていたけれど、秋の気配とともに、またしぶしぶランニングシューズを出してきた。
というわけで、東京オリンピック2020の選考会も兼ねる来年の東京マラソンの申込期間は、残念ながらもう終わってしまったが、秋風と一緒にせっかく戻ってきた走る気。大事に育てていきたいと思う。
そうして訪ねたのは、歯科医師で、全国のランニングイベントでランニングドクターも務める林幸枝さん(51)だ。ランニングラボと矯正歯科室が一体になった「ラントゥービーラボ」(東京都品川区)を、夫でプロランニングコーチの金哲彦さんとともに運営している。
今回林さんの教えを請うのは、本誌デスクと自分の、中高年女子コンビ。ちなみにデスクは今年2月の誌面で、仕事のうっぷんを「次の日の業務に支障が出るほど」ハードな深夜のランで晴らすことを告白。金さんに「ヤケ走り」と認定された。
「私が走るようになったきっかけも、ストレスからの解放でした」
そう話す林さんがランニングを始めたのは、金さんと出会う前の39歳のとき。歯科医として働きながら、父の介護でいっぱいいっぱいになっていたときだった。お酒やスイーツで、がんばる自分を甘やかす日々だったが「第1回東京マラソン」のポスターを地下鉄で見かける。
「東京でマラソンをやるんだ、と目にとまった。精一杯世話をしても意思の疎通が取れずにイライラしていたとき、そのポスターを思い出して何げなく走ってみたら、気分がすっきりした。クセになって、5分が10分に、10分が15分にと走れる時間が延びていったんです」