バッグの出品準備をする女性。終活目的なので販売がほとんどだが、ときどき趣味のトレッキングの用品などをつい購入してしまうことも(撮影/ライター・福光恵)
バッグの出品準備をする女性。終活目的なので販売がほとんどだが、ときどき趣味のトレッキングの用品などをつい購入してしまうことも(撮影/ライター・福光恵)

 中古品の売買に便利なフリマアプリ「メルカリ」。アプリだけに、ユーザーは若い人ばかり……かと思いきや、シニア世代にもユーザーが急増しているという。背景にあるのは「終活」だ。

「幻のパーシモン」「★プレゼント付き★」

 出品されたゴルフクラブの写真に、そんなコピーが躍る。出品しているのは、ライフデザイン関係の会社の代表を務める69歳の女性だ。

 女性が品物を売る目的は、お金ではない。人生の「幕引き」に向けた、身の回りの整理。いわゆる「終活」だ。

 メルカリによると、「終活」や「生前整理」のキーワードで出品をおこなうシニア世代のユーザーは増え続けており、今年1~6月は前年の2.5倍に。女性も約1年前からメルカリへの出品を始め、すでに60点以上を出品したという。

 終活を始めたきっかけは7年前。介護していた母を見送ったことだった。大正生まれの母は、とにかく物を捨てるのが苦手。亡くなったあと、好きだった着物から包装紙まで、大量の遺品が残された。

「母が大事にしていた着物などは、簡単には売ることも、もちろん捨てることもできず、知り合いひとりひとりに聞くなどして、ほしい方がいれば差し上げて、すべて整理するのに1年はかかりました。自分の娘には、同じ思いをさせたくないと、家財道具や持ち物を『断捨離』するようになったんです」

 まず手を付けたのは、夫のライフスタイルが変化したことで出番がなくなったビジネスシューズやネクタイなど。自身の物では、スニーカー通勤に切り替えたためめったに履かなくなった通勤用のハイヒールや、パーティー用ドレスなどを手放した。

 以前にもそうした不用品を中古ブランド品買い取り会社やリサイクルショップに持ち込んだことはあった。ただ買い取り会社は、お金と交換したあとは、誰が買ってくれたのか、はたまた売れたのかどうかすらもわからない。リサイクルショップも、お客さんがたまたま店に来て、見つけてくれるのを待つ受動的な仕組みだ。

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