「若いときからリスト魔で、服など持ち物をリストアップしては、ひとつ増えたら、ひとつ減らすを繰り返してきました。今あるのは、そのなかで残った大切なものたち。どちらも送り出すときに、空しさみたいなものがぬぐえなかった」
だからこそ、メルカリで購入者からの質問があれば、納得してもらえるまで丁寧に返信する。それが取引に臨む上でのポリシーだ。
「自分が大切にしていた持ち物が誰かの役に立ったことを、この目で確かめられるのはうれしいですよね」
ときには商品の話を飛び越えて、購入者の人生相談に乗ることもある。
「子育てでストレスがたまるというママに、自分の経験を話してあげました」
筆者が訪れた日、女性はフェラガモのバッグを出品準備中だった。商品写真の背景にもこだわり、手慣れた様子でスマホでサクサク撮影を進めていた。梱包にはイラスト入りのマスキングテープを使うなど、ちょっとした心遣いもリピーターを増やす秘訣だという。
このバッグは以前、米国で購入したもの。デザインと、幅38センチの何でも入る大容量が気に入って、3色持っているという。だが年齢とともに、大きなバッグはそれだけで荷物と感じるようになってきた。
「今はもっぱらポシェット。だから誰か活用してくださる方がいればと、出品します。よくブランド物のバッグを親子代々で使うという話を聞きますけど、うちのアラサーの娘は『趣味が違う』と言ってソッコー拒否。私のバッグはほとんど受け取らないですね」
参考価格約20万円を、送料込み2万円で出品。現物を見たところ、「数回しか使用していない」というのも納得の美品だった。もしやこれも、何かのご縁では……「購入手続きへ」ボタンを押しそうになる手を、必死で押さえる筆者であった。(ライター・福光恵)
※AERA 2018年9月10日号