

愛する家族や身内との別れが「孤独」を生む。しかし、たとえ家族がいても孤独を感じる人は少なくない。孤独とは何か――。人生100年時代。ひとごとではない、孤独について考えた。
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今日も、亡き妻の遺影に語りかける。
「暑かったね」
東京都に暮らす小川圭一さん(71)。最愛の妻・のり子さんは笑っているだけだ。
「たとえようのない孤独を感じます」
そう心情を吐露する小川さんは2016年3月、のり子さんをがんで亡くした。享年71。
音楽関係の仕事に就きアマチュアでコーラスを楽しんでいた小川さんが、2歳年上でプロのスタジオシンガーだったのり子さんと結婚したのは29歳のとき。仲がよく、仕事も趣味もボランティアもいつも一緒。40年近く、手を携え、時を刻んできた。
妻が亡くなり2年5カ月。クリスチャンでもある小川さんは、教会や音楽仲間など「SOS」を出す場はあり人もいる。胸の痛みも少し和らいできた。
「でもね」
と、小川さん。
「今も部屋に帰ると一人。そういう時は、もうやるせなくて」
とりわけ黄昏時の寂しさはたまらない。遺影と対話していると、自然と涙が頬を伝う。
長男(40)夫婦が近くに住んでいるが、月に1度会う程度。家に一人でいると寂しくてたまらなくなるので、日中はできるだけ外出して人と会うようにしている。妻の死後、月に1度の子ども食堂をボランティアで手伝い、週2回はデイサービスの送迎ドライバーも始めた。それでも心の隙間は埋まることはないと、小川さんは言う。
「生きている限り、孤独を抱えていくしかないと思っています」
人生100年時代――。長生きする分、死別や離別は確実に増え「孤独」はより身近になってきた。家族類型別の世帯割合は、2010年の国勢調査で「単独」が占める割合が30%を超え、「夫婦と子」を逆転、最もポピュラーな形態になった。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、40年の「単独」の世帯割合は約40%に上る(グラフ参照)。