『沖縄スパイ戦史』監督:三上智恵・大矢英代/沖縄・桜坂劇場、東京・ポレポレ東中野ほか、全国順次公開中 (c)2018『沖縄スパイ戦史』製作委員会
『沖縄スパイ戦史』監督:三上智恵・大矢英代/沖縄・桜坂劇場、東京・ポレポレ東中野ほか、全国順次公開中 (c)2018『沖縄スパイ戦史』製作委員会
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『沖縄スパイ戦史』監督の三上智恵さん(54) (c)2018『沖縄スパイ戦史』製作委員会
『沖縄スパイ戦史』監督の三上智恵さん(54) (c)2018『沖縄スパイ戦史』製作委員会

 沖縄で取材し続ける映画監督の三上智恵さん(54)のドキュメンタリー映画『沖縄スパイ戦史』が公開中だ。第2次世界大戦末期、米軍が上陸した沖縄では、少年兵によるゲリラ戦、強制移住による「戦争マラリア」の悲劇やスパイ容疑の住民の虐殺が起きていた。戦後70年以上語られてこなかったこれらの事実が、証言によって明らかになっていく。知られざる戦争の教訓を、どう受け止めるべきか。戦後73年の今、映画を通して三上監督は問いかける。

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■沖縄を二度と戦場にしないために

 これまで、三上監督はドキュメンタリー映画『標的の村』(2013)、『戦場ぬ止み』(15)、『標的の島 風かたか』(17)を通して、沖縄・高江のオスプレイ配備、宮古島や石垣島のミサイル基地建設や自衛隊配備の現状を訴えてきた。共通するメッセージは「この島を二度と戦場にしないというシンプルな思い」だ。

「私自身この20年、戦争と基地と軍隊の問題を報道し続けてきました。それでも、全国同様に沖縄でも自衛隊や米軍がいたほうが安心という意識が強くなっています。ということは、これまで沖縄戦で学び取るべきものが偏っていたということです」

 自分は何のために報道してきたのか。どうしたら伝わるのか。やり場のないいら立ちと焦燥感を抱き、三上監督がたどり着いた先は「直球で沖縄戦の作品を作ること」だった。

「沖縄戦からしかわからないことは、武力衝突ではないところでたくさんの人が死んでいったということ。住民は土地、家屋、食料、親類縁者の情報を全て明け渡し、軍は住民を使って遊撃戦をしていたということです」

■旧軍隊と自衛隊の相違点

「先日、石垣島がある石垣市の中山義隆市長が陸上自衛隊を配備する計画を受け入れました。あれほど地元の集落が反対しているのに……」

 宮古島では19年3月までに陸自の警備隊を配備する計画が進んでいる。三上監督は徐々に離島が軍事化されていくことに危機感を募らせている。映画を見る人に自分事として捉えてもらうため、今回は沖縄戦を具体的にイメージでき、それが現代にどのように影響しているかを問う内容にした。

 テーマは大きく三つに分かれている。ゲリラ戦をした「護郷隊」は10代半ばの少年で編成されていたこと、波照間島の住民は軍の命令により強制移住させられた先でマラリアにかかって500人近くが死亡したこと、住民が住民を監視する疑心暗鬼の状態になった集落で虐殺が起きていたこと。

「それらを伝えた上で、もし本土決戦になった場合どうだったのか。その答えは、沖縄戦と同じように、住民を使って戦う状況になっていたということです。そして、戦時中に住民を利用した旧軍隊と、現在の自衛隊の本質は変わっているのかいないのか。その一番大事なポイントを映画内で伝えています」

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加害者と被害者の境界線があいまいに