経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。
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西日本豪雨の被害はますます拡大しており、規模も深刻さも当初の予想をはるかに超えてきました。被害にあわれた方には心よりお見舞いを申し上げますとともに、一刻も早い復興に向けて微力ながらお手伝いしてまいります。
道路、鉄道など様々な分野で必死の復興作業が続いておりますが、それにつけてもとにかくひどいの一言に尽きるのがあの避難所。
小学校の体育館などが指定されており、ござを敷いて寝かされて、エアコンはおろか、シャワーさえないところがほとんど。今週広島に入り、何カ所かボランティアに行きましたが、このくそ暑い広島で、シャワーも風呂もなく、プライバシーもこれっぽっちもない空間に高齢者が集められているのを見ると、どこが経済大国なんだ、と言いたくなる。はっきり言うが私が過去に見てきたドイツなどの難民キャンプ以下の生活を強いられていると言っていい。
災害による被害の多い日本で、なぜこんなレベルの避難所しかできないのか。アメリカのハリケーン・カトリーナ(2005年)、イタリアのラクイラ地震(09年)の後1カ月ほどして現地を訪ねましたが、あんな劣悪な避難所は見たことがない。エアコンは確かに設置されていない所がありましたが、その他はシャワー、トイレ、プライバシーの確保、温かいマットレスなどあらゆるものが整備されていました。もちろん米欧すべてを見たわけではありませんが、日本のそれがダントツでレベルが低いことは明らかです。
オスプレイ1機に200億円も払うお金があるなら、こういうことをちゃんとやれ、と声を大にして言いたい。災害の多い日本が率先して取り組みを発展させることは、国際貢献上も非常に意味があるのではないですか? 被災しているんだから贅沢を言うな、ではなく、被災しているからこそ日頃より手厚い保護が必要なのではないでしょうか。例えば洗浄便座。シャワーに入るのもままならない被災者にとっては必需品ではないでしょうか。これ、日本の得意な技術です。
さらに今回の被災地で明らかになったのが地方における高齢化の現実です。広島では1階部分が土砂で埋まってしまい、2階で生活を余儀なくされている家が結構あるわけです。重機が入れるスペースもなく、復旧は人力ということになりますが、一番若い人で60歳、なんて冗談みたいな話があります。そりゃ今の60代は元気でしょう、といったって、これは話が別ですよね。
経済大国にふさわしい自然災害対策はもちろん、ますます増える高齢者の災害における救済も喫緊の課題と言っていい。こういう所には大いにお金を使うべし。安倍さんも消費税なんて上げるつもりなら、こういう課題に真剣に取り組むべきでありましょう。
※AERA 2018年7月30日号