ニッカウヰスキー/東京・青山にあるニッカウヰスキー本社地下にあり、ニッカのウイスキーだけを扱う「ブレンダーズ・バー」。「ドラマ『マッサン』効果で、地方からのお客様も増えています」と支配人の黒澤聡。限定品も置いてあり、「ボトルで売ってくれ、という外国人旅行者も多いんですが、断っています」と黒澤は笑う。特別ブレンド「ブレンダーズウイスキー」が味わえるのも、ここだけ(撮影/写真部・加藤夏子)
ニッカウヰスキー/東京・青山にあるニッカウヰスキー本社地下にあり、ニッカのウイスキーだけを扱う「ブレンダーズ・バー」。「ドラマ『マッサン』効果で、地方からのお客様も増えています」と支配人の黒澤聡。限定品も置いてあり、「ボトルで売ってくれ、という外国人旅行者も多いんですが、断っています」と黒澤は笑う。特別ブレンド「ブレンダーズウイスキー」が味わえるのも、ここだけ(撮影/写真部・加藤夏子)
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撮影/写真部・加藤夏子
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 サントリーが生み出した「角ハイボール」という飲み方をきっかけに、ウイスキー人気が高まった。同業他社もその波に乗るが、一方で好況ゆえの悩みもある。

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「サントリーが火をつけたブームに私たちも乗りました」

 そう言うのは、ニッカウヰスキーを子会社にしているアサヒビールのマーケティング第三部(洋酒)担当副部長、榊原守弥だった。サントリーの角瓶とはライバル関係にある「ブラックニッカ」でハイボール市場に参入した。ただ「乗っかった」だけではない。

 14~15年にかけて、「フリージングハイボール」を仕掛けた。独自に開発したディスペンサーによって、氷点下(マイナス2~0度)に冷やしたブラックニッカのハイボールを飲食店で提供できるようにしたのだ。

「これが消費者に好評で、すでに1万を超える店舗で導入してもらっています」

 と、榊原。それぞれの工夫による仕掛けがあって、ハイボール市場が大きくなっていったわけだ。そこに、さらに追い風が吹く。

 14 年9月から15年3月まで放送された、NHK朝の連続テレビ小説「マッサン」である。主人公のモデルはニッカウヰスキーの創業者で、「日本のウイスキーの父」と呼ばれる竹鶴政孝であり、ウイスキーが大きなテーマになっていた。

「朝から酒の話で大丈夫かな、と思いましたけどね」

 と、榊原は笑う。しかし、このドラマが大ヒットとなる。彼が続ける。

「ものづくりに対する真摯な姿勢が共感を得たんじゃないでしょうか。ウイスキーとは馴染みが薄いと思われる主婦層にも人気が高かったのは驚きでした」

 ドラマのヒットが、ウイスキーの売り上げにも好影響を与えることになる。ハイボールのブラックニッカだけでなく、他のブランドも好調な売れ行きを示していく。

「そのため、15年にはブランドの集約を図りました。エイジングを謳った10年もの、20年ものの原酒を使ったブランドを販売終了にしています」

 あまりにも売れたために、熟成に時間のかかるエイジングものが製造できなくなったのだ。原酒不足である。10年以上熟成の原酒を使った「余市」や「宮城峡」が終売した。

 ハイボールと「マッサン」で低迷から脱却したものの、新たな試練を迎えているわけだ。(文中敬称略)(ジャーナリスト・前屋毅)

AERA 7月16日号より抜粋