宮藤:初演の「メタルマクベス」は新感線との初めての共作で、シェイクスピアも初めて。その後、何度もご一緒するとは思っていなかったし、やりたいことをやらなきゃ損だと思って、全部詰め込んだんです。力みすぎたと思っていたけど、今回読み返したら思いのほかちゃんとしてた。それは、シェイクスピアがちゃんとしているということですね。壊れない(笑)。

いのうえ:そうなんだよね。一見ガチャガチャしていい加減に見えるけど、すごくシェイクスピアなんだよ(笑)。宮藤くんの脚本は笑い方が劇団☆新感線と似ている。物事の面白がり方が。だから僕は合うと思っていたんだけど、それは間違いなかったな。

 ――「メタルマクベス」の舞台は2218年の衰退した世界と、空前のバンドブームに沸いていた1980年代の日本。7月、9月、11月の開幕でそれぞれ個性の異なる3組のキャストたちで上演。基本となる脚本は同じだが、演者に合わせて演出が変わる予定だ。

宮藤:今回もびっくりする演出がたくさんあるんだろうけど、脚本で言えばオープニングは大きく変えたのでこれでいいのかな、大丈夫かなと思っているところはあります(笑)。あとシェイクスピアの台詞(せりふ)を全部歌の歌詞にしている。原作の台詞の大仰なところをメタル音楽の歌詞ということで、のみ込みやすくしました。メロディーがついて、すごく普遍的なものになった気がするので、それをキャストの皆さんがどう歌うのか、想像しただけでワクワクします。例えば、「俺の体はサソリでいっぱいだ」というのも、そもそもマクベスの台詞なんですが、冷静に考えたら笑っちゃいますよね。

いのうえ:これがモノローグ(独り言)だもんね。

宮藤:でも、これがメタルの歌詞になるとしっくりくる。ぜんぜん恥ずかしくない。そんな発明があって面白かったです。

いのうえ:メタル音楽とシェイクスピアとは親和性があるんだよ(笑)。悪魔だなんだっていうのも、それこそ元の台詞が「俺の心はサソリでいっぱいだ」「地獄の炎で焼いてやる」だから。そんなにずらしても変わらない。ぴったりなんです。

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