高齢出産が増えているが、さまざまなリスクが伴うことを忘れてはいけない。正しい知識を持って、自分事として受け止め、少しでもリスクを減らすことが肝心です。
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高齢出産は将来かかるリスクの高い病気を見つけ、自分の心身と向き合ういい機会。正しい知識を持って臨めば高齢出産も怖くはない 晩婚化や不妊治療の進歩によって妊婦の4人に1人が35歳以上で出産し、「高齢出産」は珍しいことではなくなった。40歳以上の芸能人や著名人が出産したニュースが流れ、周囲にも高齢出産の経験者は多い。となると、つい40歳を超えても無事子どもを授かれるものだと安易に思ってしまう。
ただ、高齢出産自体はリスクが高いことに変わりはない。(1)妊娠自体がしづらい(2)妊娠中もトラブルが起きやすい(3)胎児に染色体異常などが起きやすいなどのリスクがある。
今回、アエラネット会員などに行ったアンケートでは、アラフォーで母に、アラフィフで父になったことを肯定的に捉えている人が9割にのぼったが、その人たちの中にも、「40歳近くになるまで卵子が老化することを知らずにいたことを後悔している」「高齢出産のリスクを学生の時に知っておきたかった」という意見があった。
子どもを持つか持たないか、いつ産むか、何人産むかを自由に決める権利を「リプロダクティブ・ライツ」というが、生殖年齢に限界がある以上、自分が希望するように産むためには、妊娠や出産の知識を持っておくことは大切だ。
まずは、加齢による妊娠率の低下。日本産科婦人科学会理事長や日本生殖医学会理事長などを務めた吉村泰典・慶應大学名誉教授はこう指摘する。
「人間の平均寿命は、50年前と比べて10歳以上も延びているが、生殖可能年齢は昔と変わっていない。35歳を過ぎると卵子の質が低下し、妊娠率も下がってしまう」
女性の卵子は生まれる前の胎児のときに最も数が多く、その後は減り続けるばかりで新たに作られることはない。また、卵子は減少するばかりでなく、その質が低下して受精がうまくいかなくなる。加えて、年齢が上がると、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科疾患にかかる確率が増し、着床を妨げたり、精子と卵子が受精する卵管を詰まらせたりして不妊の原因になる。
なお、男性も高齢になると精子の運動率が下がるなど不妊のリスクが高まるという報告がある。妻だけが不妊治療に懸命になっていたが、調べてみたら夫側に問題があったということは少なくない。男性も妻任せにしないで病院で検査するなどし、不妊に備えることが大事だ。