妊娠できたとしても、35歳以上になると、妊娠期間中や分娩時のリスクも高いので注意が必要だ。日本の周産期医療は世界トップレベルだが、母親の年齢と周産期死亡率(妊娠満22週以後の胎児と生後1週未満の早期新生児の死亡率)を見ると、25~29歳が最低で、母親の年齢が上がるほど周産期死亡率も高くなる。
加齢によって生活習慣病によるリスクも上がる。妊娠中は体を流れる血液が約1.5倍に増え、それを全身に送るために妊娠高血圧症候群を発症する妊婦や、妊娠によってインスリンが効きづらくなり妊娠糖尿病になる妊婦も増える。妊娠高血圧症候群は母子の命にかかわる常位胎盤早期剥離などの原因にもなる。高齢出産がこれだけ増えている中、「医療現場の懸命な努力で母子の命を守っている状況」(吉村さん)なのだ。
意外に知られていないのが早産の怖さだ。ただ小さく生まれるだけではない。早産で生まれた赤ちゃんは体の器官や働きが未発達で、誕生直後に病気にかかりやすく、後遺症や障害が残る可能性もあるが、深刻さがなかなか理解されない。
都内に住む会社員の女性(40)は、現在1歳の長男の妊娠25週(7カ月)のとき健診を受けに行ったら、医師から「このまま入院です」と告げられた。早産しかかっている切迫早産だった。家事もやりかけのまま出てきてしまったし、明日は仕事で大事なアポイントが入っている。
「一度職場に行きたいんですけど……」
と恐る恐る口にすると、
「赤ちゃんの命と仕事、どっちが大事なんですか」
と強い口調で言われた。車いすに乗せられて2階の病室まで移動しながら、一歩も歩いてはいけないほど深刻な事態なのだと理解した。3週間で退院したが、自宅療養を言い渡され、そのまま職場に戻れず出産した。
「同年代の友人が普通に産んでいたから大丈夫だと思っていたけど、高齢出産は早産などのリスクが高いと自覚しました」
子宮筋腫や子宮内膜症も流産や早産につながることがある。どちらも晩産化が進んで妊娠・出産期の女性に増加している病気だ。(編集部・深澤友紀)
AERA 2018年6月25日号より抜粋