「このレベルの俳優だと現場入りは前日も当たり前だけに、とても感心しました。準備に時間をかけるなど、私と仕事の仕方も似ていて、すごくウマが合いました」

 スリリングな展開にもかかわらず笑いさえちりばめられた、一筋縄ではいかない心理サスペンスだ。

■もう1本 おすすめDVD「グラディエーター」

「ビューティフル・デイ」もそうだが、ホアキン・フェニックスはどこかイッちゃってるような、正気と狂気の間を漂うような役をやらせるとピカイチだ。

 子ども時代から芸能活動を始めたホアキンだが、彼の名を一気にメジャーにしたのはアカデミー賞作品賞を受賞した「グラディエーター」(2000年)だろう。映画の舞台は帝政ローマ時代中期。将軍マキシマス(ラッセル・クロウ)が剣闘士となって、自分を陥れた皇帝コモドゥス(ホアキン・フェニックス)に復讐を果たす。

 野心家のコモドゥスは父マルクス・アウレリウスを暗殺し、父が絶大な信頼を寄せ、後を継いでほしいと頼んでいた有能な将軍マキシマスの処刑を企てる。さらに、彼の妻子を処刑。血も涙もない皇帝なのだが、ホアキンが演じるとそこに浮かび上がるのは、デキる男に対する劣等感、愛されない孤独感……。見る者がコモドゥスを全否定できない、人間の弱さや脆さを感じさせるのだ。

AERA 6月18日号

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