

「コンビニ百里の道をゆく」は、48歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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以前、本連載でも話しましたが、世界の投資家回りも社長の大切な仕事です。ゴールデンウィークはロンドンで10人以上の投資家、アナリストに会い、ローソンの事業戦略を説明してきました。
皆さんが興味を持っていたのは「コンビニ市場は成熟し、今は踊り場。これから成長できるのか」という点でした。長年、日本の小売り、コンビニ業界を見てきた投資家の方々だけあって、日本の事情には本当に詳しい。さらに、いろいろな経営者とじかに会い、フレッシュな情報も持っている。人手不足や少子高齢化の現状はもちろん、EC(電子商取引)やドラッグストアの台頭、スーパーマーケットとのすみ分けまで、細かく市場を分析しています。
その上で、「君はどういう成長戦略を持っているのか」と問われるわけです。中長期保有の投資家も多く、関心事は短期戦略よりも3~5年後くらいの未来図です。
家事や子育て、仕事に忙しい現役世代のニーズに応え、生鮮品やお料理キットなど、ネット注文した商品が夕方に最寄りの店舗で受け取れる「ロピック」を一部地域で始めたことや、増加するシニア世代のニーズを取り込むべく、医薬品を扱うヘルスケアローソンや介護相談窓口を備えたケアローソンを展開したことなど、ここからが第2の成長期だと強調しました。
アマゾンの隆盛や人手不足などから、リアル店舗を持つことが、収益の足かせになっているのではという意見もありました。それに対しては、スマホ決済や自動釣銭機などデジタル技術を最大限活用し、リアル店舗に「人がいる価値」を最大化していく戦略を説明。とても共感してくれました。先を読む方々だけにイノベーティブな挑戦にはとても好意的です。「ロピック」が使える地域を今すぐもっと増やすべきだ、という熱いご意見もいただきました。
あとは、結果。ロンドンの投資家の皆さんに来年いい報告ができるよう、有言実行していきます。
※AERA 2018年6月18日号