高齢化が進む今、介護の負担に悩む人は少なくない。AERAで介護に関するアンケートを実施したところ、様々な声が寄せられた。介護にまつまる悩みと、それに向き合った人の声を紹介する。
アンケートでは、「身近に相談相手がいない」と訴える声も目立った。特に認知症は介護する人が悩みを抱え込みがちだ。在宅から施設入所を経て、現在は精神科病院の認知症病棟に入院している母(82)を介護する女性(57)は言う。
「母のためを思ってやってきましたが、不幸の真っただ中にいるような様子ですべての介護を拒否している。胸が痛みます」
元気だった頃の母は、家事を完璧にこなし、お洒落で外出も大好きだったが、父親が亡くなってから、料理も掃除も入浴も嫌がるようになった。母とケアマネジャーはほとんど面会できないまま、症状は悪化。なんとか入れた施設でも「介護拒否がひどすぎる」と言われ、精神科病院に行き着いた。この先どうすればいいのか……。
仕事との両立、認知症のケア、遠距離介護。これらをすべて経験し、「40歳からの遠距離介護」というブログで発信する人がいる。工藤広伸さん(45)だ。
工藤さんは末期がんと認知症を患う祖母と、祖母の介護をしながら自分も認知症を発症した母の介護で、40歳で離職。東京と実家のある岩手を年間20往復しながら、一時期は父の末期がんの闘病も支えた。工藤さんからのアドバイスは主に三つ。
(1)認知症介護者が必ずたどる「四つのステップ」を知ること
(2)相談は身近な人より遠い人に
(3)人やモノにとことん頼る。
(1)では認知症の症状を目の前にした時の「戸惑い・否定」が第1ステップ。自分の常識で認知症の人を説得しようとして失敗し「混乱・怒り・拒絶」の気持ちと格闘するのが第2ステップ。「割り切り・あきらめ」が第3ステップ。認知症の人の不安な気持ちに寄り添って介護できるようになる「人格的理解」が第4ステップだ。