「普通、第2ステップまでに多くの時間を費やしますが、意識的に第3、第4ステップに進むだけでかなり違う」(工藤さん)

(2)について工藤さんは、介護関係のブログやツイッター上で相談するのも手だと話す。

「ネットで発信している介護経験者や専門家はパッと返信をくれたりします。家族だとケンカになることも、離れた薄いつながりの人に言われると納得できることが多い」(同)

(3)は工藤さんの介護のモットーでもある。母の遠距離介護では、毎日、誰かしらが母のもとを訪ねる体制を組む。安くて設置・操作も簡単な見守りカメラなどもとことん使い倒す。

 アンケートでも、身近に欲しい介護機器について、様々なアイデアが寄せられた。

 認知症の母の介護拒否に悩む前出の女性は、ある時、ソフトバンクグループの人型ロボット「ペッパー」の効果に驚いた。母をなんとか入浴させようと温泉に連れだした時のこと。不機嫌そうだった母の表情が、フロントにいたペッパーと握手し、会話すると一変した。

「あんな柔らかな顔を見たのは何年ぶりでしょう。母は動物が大好きだったので何か思い出したのかもしれません」(女性)

 認知症の人と会話ができる技術の開発も始まっている。成蹊大学理工学部の中野有紀子教授が実証実験を進めるのは、パソコンの画面にキャラクターが映って対話する「会話エージェント」。「朝ごはんを食べましたか?」「何を食べましたか?」などと次々と質問を投げかける。

「そんな単純なものと話をしてくれるのか心配でしたが、予想外に楽しんでもらえた。認知症の専門家によれば、本当は話がしたいのに、同じことを何度も聞いて周囲を困らせるからと話をしなくなる患者さんもいる。人工物相手なら話したいだけ話せます」(中野教授)

 技術が進めば、独居の高齢者の会話の様子から体調の変化を家族や介護スタッフに伝えられるようになるかもしれない。

「孤独から救い出し、周囲の人につなぐ『人に寄り添うロボット』は十分実現可能です」

(編集部・石臥薫子、柳堀栄子、高橋有紀)

AERA 2018年6月4日号より抜粋