福田氏の人権に言及して擁護するような姿勢を見せながら、本人が認めないうちにトカゲの尻尾を切り、自らはトップに居座り続ける感覚も疑問だ。
さらに、5月4日に外遊先のフィリピンで飛び出したのがこれ。
「セクハラ罪っていう罪はない」
「殺人とか強わい(強制わいせつ)とは違う」
麻生氏は帰国後も同様の趣旨の言動を繰り返し、また福田氏が被害女性記者に「はめられた可能性がある」という発言も、撤回はしたものの幾度も繰り返した。財務省が行った処分との整合性にももとるし、また人権感覚がゆがんでいるとしかとらえようがない。そもそも国の指導者として何を主張したいのか。
政治評論家の森田実氏はこう断じる。
「副総理兼財務相どころか政治家を即刻辞めるべきだ。それぐらい度を越してひどい。海外にも伝わっている日本の恥です」
麻生氏が気分次第で放言を繰り返す癖は、今に始まったことではない。ヒトラーを引き合いに出した失言も一回ではないし、1983年には女性差別問題に対する意識の低さを露呈するようなこんな発言をしている。
「東京で美濃部革新都政が誕生したのは婦人が美濃部スマイルに投票したのであって、婦人に参政権を与えたのが最大の失敗だった」
森田氏は言う。
「自民党が政権を失ったのは2回。ひとつは宮澤喜一内閣のときに党が分裂して日本新党を中心とした野党勢力による細川護熙政権になった。もうひとつは麻生政権時代に、彼自らが失言を繰り返したり、小学生でも読めるような漢字・熟語を何度も読み間違えたりしたことで国民の信用を失い、民主党政権が誕生した。そういう人間がまた重要な立場で出てきて、黙っている間は目立たなかったのが、発言する機会が増えたことで、とんでもなく品格に欠け、礼節を心得ない人物であることが明らかになった」
精神科医で評論家の野田正彰・元関西学院大学教授は、麻生氏が首相だったころ、学会などで訪れた欧州でこんな小噺(こばなし)をよく耳にしたという。
「世界で一番難しい言語は、日本語だ」
その心は、総理大臣でも文字を読めないから、という皮肉。そして2009年8月30日、麻生内閣が解散して臨んだ総選挙で自民党は119議席しか取れず惨敗、雪崩を打つように民主党は票数を伸ばし308議席を獲得した歴史的選挙になった。あれからまだ10年経っていないのだ。
野田氏はこう語る。