暴言連発の麻生財務相=(c)朝日新聞社[AERA 2018年5月28日号より]
暴言連発の麻生財務相=(c)朝日新聞社[AERA 2018年5月28日号より]

 麻生太郎副総理兼財務相の暴言が止まらない。「セクハラ罪はない」と身内をかばい、「見てくれの悪い飛行機が途中で落ちたら話にならん」と北朝鮮まで揶揄。「即刻辞めるべき」との声も上がる。

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 麻生太郎副総理兼財務相(77)はまさに「銀の匙(さじ)」をくわえて生まれてきた。九州・福岡時代は父親が自分のためにつくった「麻生塾小学校」に通い、上京後は皇室とも関わりの深い学習院初等科からエスカレーターで学習院大学を卒業した毛並みの良さ。クレー射撃で日本代表として五輪にも出場したスポーツマンであり、洗礼を受けたクリスチャンでもある。

 祖父は吉田茂元首相、高祖父は明治の元勲・大久保利通という遺伝子を継ぎつつ、漫画が好きで漢字が苦手。そんな麻生氏は今、自らのみならず国の品格が問われる立場にありながら、自律できない。安倍晋三首相も注意できない。安倍氏がスローガンに掲げていた「美しい国」はいつの間にか「恥ずかしい国」になってしまった。

 本音なのか失言なのか妄言なのか。麻生氏の乱暴な言葉遣いが特に目立つのは、公文書改竄(かいざん)から次官がセクハラで辞任した一連の財務省の不祥事について、責任者としてコメントを求められるようになった今年3月以降だ。

 まず、国税庁長官だった前理財局長の佐川宣寿氏を改竄の「責任者」と断じ、報道陣を前に「サガワが、サガワが」と呼び捨てで連呼。文字に起こすのもおぞましいようなセクハラ発言を繰り返していた福田淳一前事務次官については、被害を受けた女性記者が特定されていない段階の4月16日、財務省が女性記者の被害申告を求めると発表、それを受けた麻生氏は被害者が名乗り出ない限りセクハラの事実は証明できないとした上で、テレビカメラに向かって上目遣いにこう言い放った。

「福田の人権は、なしってわけですかぁ」

 冤罪(えんざい)事件に挑む弁護士を気取ったわけではないだろうが、18日には福田氏がセクハラ自体は否認しながら「仕事にならないから」と珍妙な理由で辞意を表明。それから数時間後の19日未明に女性記者が所属していたテレビ朝日が記者会見して被害を訴えた上で財務省に抗議した。そして、福田氏がセクハラ行為を認めないまま同27日、財務省が「テレ朝側の主張を覆す証拠が示されなかった」という理由で福田氏のセクハラ行為を認定、懲戒処分として5319万円の退職金から141万円を減額すると発表した。

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