1996年から男女の生き方について誌面で取り上げてきたAERA。20年余りの時を経て、男女の関係、とりわけ女性を取り巻く環境には多くの変化があり、そうした環境の変化は様々な問題も生じさせてきた。しかしその一方で、新たな男女の関係も生まれ始めている。
仕事と家庭の対立構造に問題がある、と指摘するのは、育児・教育ジャーナリストのおおたとしまささん(45)だ。
「仕事を『競争』、家事や育児や介護を『ケア』と定義すると、高度経済成長期は、ケアを女性に任せ、男性は競争に注力していればよかった。現代は、男女間の格差は過去に比べれば緩和されましたが、競争かケアかという問題は、今では男女両方に立ちふさがっています」
仕事と家庭の間で、男性もまた葛藤するようになった。いま、おおたさんが注目するのは、東大女子の生き方だ。
「東大という学歴の頂点で『競争』を象徴し、女性でもある彼女たちの生き方から、課題と可能性が見えてくるのでは」
96年、新卒で銀行に就職した東大卒のある女性(45)は、終電やタクシー帰りは当たり前、バリバリ働いてきた。結婚し、04年に第1子を出産。夫より稼いでいたが、育児休暇は「議論することなく、当然のように」自分が取った。夫は出張が多く、育児はいまでいう「ワンオペ」状態。保育園のお迎えのため18時過ぎに社をあがり、翌日出社すると、仕事の話がひっくり返っている。キャリアの限界を感じ、07年に独立した。仕事を選び効率的に進めるようになり、仕事の幅も広がった。軽やかな成功例に見えるが、いまだに納得できない部分は残る。
「夫と私の仕事に優劣はないはずなのに、子どもの急な用事が入るときは、私が必ずアポを調整して駆けつけます。夫が譲ったことはない。私は納得していないんですが……」(女性)
家事の負担を可視化すべく、タスク表をつけた。夫20、妻90、ベビーシッター48……。数字が出ても、夫の胸には響かない。
男女の仕事と家庭をめぐる葛藤は、時代を経ても変わらないのか。