さらに、水野同様まだ現役だが、J史上最速クラスの俊足を持つ永井謙佑(名古屋)は、ロンドン五輪で4位躍進に貢献してJリーグでも長く活躍を続けているが、岡野雅行と同じく「大成したか」と問われると疑問符が付く。そして、その爆発的なスピードを武器に高校卒業後に海を渡り、2012年に19歳でA代表デビューを飾った宮市亮(横浜FM)は、間違いなく「日本の未来を担う逸材」であり、「世界に通用するスピードスター」だったが、度重なる故障でキャリアが停滞。2021年にJ復帰を果たした後、2022年7月に10年ぶりのA代表選出が話題となったが、そのピッチ上で右膝前十字靭帯断裂の大怪我を負う不運。すでに30歳となり、ここから「大成する」というのは現実的ではない。
カタールW杯の日本代表には、伊東純也、前田大然、浅野拓磨などの「スピードスター」が多くいた。そして現在のJリーグにも、細谷真大(柏)、藤井智也(鹿島)、横山歩夢(鳥栖)といったスピード自慢のアタッカーたちがいる。世界のサッカーの潮流を見ても、単純な足の速さ、スピードを備えた上で、技術、戦術に優れた選手が多くなっている。今後、「新しい景色」を見るためには、日本にも伊東純也に続く「大成したスピードスター」の出現が大いに求められている。(文・三和直樹)