

最先端テクノロジーを支える衛星ビジネスが活況を呈する中、日本発の「宇宙ベンチャー」が花盛りだ。好奇心と才気あふれる時代の旗手たちが描く未来は希望に満ちている。
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重さ100キロ以下の超小型衛星の技術をベースに世界に挑むのが、「アクセルスペース」だ。創業以来、世界初の民間商用超小型衛星を含む三つの実用衛星開発を成功に導いたCEO、中村友哉(38)の視座は高い。
「これをやったから社会がこう変わったと、あとから自信をもって振り返ることのできるぐらいの仕事を成し遂げたい」
東京大学理科I類に入学後、選択に迷いながら出席した学科のオリエンテーションで、目をキラキラさせながら「一緒に小型人工衛星をつくろう!」と呼び掛ける工学部教授の中須賀真一に出会ったのが転機になった。
超小型人工衛星づくりを続けたい一心で同大学院の博士課程まで修了した。大学発ベンチャー支援制度を知り、会社を立ち上げることを思い立った。
だが、人工衛星のセールスは至難の業だった。起業準備中、1年かけて数十社を訪ねたものの、受注実績はゼロ。それが民間気象情報会社「ウェザーニューズ」創業者の石橋博良と出会ったことで運命の扉が開く。同社の受注を得て、起業に踏み切ることができたのだ。中村は、「ビジネス界の恩師」という石橋の言葉を胸に刻む。
「1匹目のペンギンになれ」。新しい価値を生み出す使命を果たすには、リスクを負って最初に海に飛び込む覚悟が必要──。
石橋から「社会変革の先駆者」の矜持を学んだ中村は今、数十機の衛星群からなる地球観測網によるデータプラットフォーム事業に挑む。実現すれば農業、森林監視、経済予測、都市計画など多様な分野への貢献が見込まれる。中村は平然と言う。
「宇宙が暮らしに溶け込む時代の牽引役を、私たちの超小型衛星の技術で担いたい」
人工衛星の運用に不可欠なのが、地上で電波を送受信するアンテナだ。しかし、衛星が1基のアンテナに送信できるのは一日40分程度。この非効率性を克服するため衛星用アンテナの「シェアリング」事業に取り組むのが「インフォステラ」だ。