日本発の「宇宙ベンチャー」が着々と歩みを進めている。中には「人工の流れ星」といった夢のある技術を実現させようとする企業もある。
「ミッションは明確。邁進するのみです」
3月20日、都内で開かれた内閣府主催の「宇宙シンポジウム」。パネリストとして登壇した「アストロスケール」のCEO、岡田光信(45)はよどみなく語った。同社は宇宙ゴミ(スペースデブリ)の除去を掲げる世界唯一のベンチャー。スペースデブリとは、故障したり役割を終えたりした人工衛星やロケットの部品などの総称だ。高速で移動し、小片でも人工衛星を爆発させる破壊力を持つという。
シンポで岡田は、この96時間で米国―日本─シンガポール─ドイツと移動してきたと明かし、「それぐらい、世界各国で宇宙ゴミの問題が活発に議論されているんです」とアピールした。精力的なビジネスマンの風貌を備えた岡田の資質はどのように培われたのか。
岡田は、DNAの塩基配列を読み解く国家間競争にしのぎを削る大学院の研究現場で、政策立案の重要性に気づく。進路変更し、大蔵省(現財務省)に入省。その後、IT業界に飛び込み、アジア各国を拠点に10年間、グローバル経営のノウハウを蓄積した。そんな中、迎えた39歳。岡田は40代をいかに生きるか悩んだ、と言う。
「中年の危機というものですね。自分の原点に立ち戻ったとき、やっぱり宇宙だと悟ったんです」
高校時代には宇宙飛行士の訓練を疑似体験できるNASAの教育プログラムに参加したことも。兵庫県の阪急沿線で育った岡田が敬愛する経済人は「阪急電鉄」の生みの親の小林一三だ。岡田はこう宣言する。
「日本の閉塞状況を吹き飛ばすぐらい、堂々たるグローバル企業を目指します」
宇宙空間の軌道上でデブリを模した人工衛星を取り除く実証実験が19年に控える。宇宙ビジネスの先駆者として、岡田が小林に重ねられる日もそう遠くないかもしれない。
「好奇心で動いている世の中って、面白そうじゃないですか」
人工流れ星をつくる「ALE」のCEO、岡島礼奈(39)に、科学的好奇心に満ちたまっすぐな視線を向けられると、うなずくしかなかった。科学とエンターテインメントを融合させる発想はどんな経緯で生まれたのか。