2016年度入試から始まった大学の入学定員充足率厳格化で、近年の私立大学入試は厳しさを増している。定員に対する入学者の割合が基準値を超えると国からの補助金がカットされてしまうため、大学側は合格者数を抑える必要に迫られているからだ。
一般的には少子化に伴い大学入試が楽になるのかと思われてきたが、現実はむしろ逆の傾向もみられるというわけだ。
大学入試の現状に詳しい大学通信の安田賢治常務は、18年春の大学入試についてこう振り返る。
「有名大学が軒並み合格者を絞り込んだことで、名門高校でも合格実績が低迷する厳しい結果となりました。それでも勢いのある中高一貫校の中には、大きく実績を伸ばすところもみられます。躍進する学校に共通しているのは、なんらかの改革に取り組んでいることです」
そのひとつが、05年に中高一貫部を設立し、既存の高校と並立させて教育改革に乗り出した大宮開成中学・高等学校(さいたま市)だ。10年前(07年度)は31人だった「早慶上理(早稲田大、慶應大、上智大、東京理科大)」の合格者を169人に増やし、40人だった国公立大学合格者を94人に伸ばした。
山中克修校長は、同校の教育改革についてこう説明する。
「学校がいくら良い授業や補習をしても、その効果には限界がある。やはり最も伸びるのは、自ら学べる子です。そこで中1生のうちから、時間管理と学習習慣の定着を徹底することにしました」
生徒には専用のノートに毎日、学習と生活の予定と記録を詳細につけさせている。起床から就寝時間、自習を始める時間と内容を生徒自身が計画して記し、実行できたかどうかを振り返る。
さらに、学年が上がると1日のスケジュールを時間単位でより詳細に計画し、将来の夢とそのために実行すべき行動を逆算して、長期、中期、短期の目標に落とし込んでいくという。目的意識を明確にして学習へのモチベーションを上げていくのが狙いで、「意識高い系」のビジネスパーソンも顔負けの“セルフマネジメント”を徹底的に身につける指導だ。