果たして、2社に限らず、生保業界にはデジタライゼーションの波が押し寄せてきている。この技術革新によって長寿化は一段と進み、個人のDNAを解析した予防医療分野も著しい進歩を迎えると言われる。これらの動きは、従来型の医療保険を前提にしては評価できないような新機軸がこれから続出してくることを十分に予感させている。

 もっとも、いまは混在と混乱の時代である。現に4月以降、医療保険分野では既存商品が新たな保険料に組み替えられて続々と生み出されるにちがいない。それらは監督官庁である金融庁に各社が商品申請し、金融庁が審査のうえで認可するという手続きが取られる。単なる営業戦略で保険料をダンピングし、経営の健全性が損なわれないようにする重要な防波堤と言える。

 というのも、いま保険監督者国際機構は、世界の保険会社に新たな資本規制を導入する方向で協議している。当初に比べて緩和され、時期も延期されたとはいえ、実際に導入となれば、状況次第で日本の保険各社には、資本増強、資産の抑制などで重荷になりかねない。

 いまのところ、4月以降の商品審査に向けて、金融庁には経営の健全性を問題視せざるを得ないような空気は感じられない。保険料引き下げがあっても、各社の健全な経営努力によるものとなるだろう。

 そもそも銀行預金などと比べると、格段に複雑な仕組みで、しかも、社会の複合的な変化を如実に反映する保険商品はデジタライゼーションにもより親和性があると言える。これから生保各社の武器は最新鋭化し、戦い方も変わってくるにちがいない。もちろん、大番狂わせも起きかねない。かくして、生保業界は新旧すべての戦いでいよいよ白熱化する。(金融ジャーナリスト・浪川攻)

AERA AERA 2018年4月9日号より抜粋

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