長寿化が死亡保険に及ぼすインパクトとは逆に、医療保険分野では長寿化は保険料引き上げを促しやすい。長生きによって疾病、けがなどのリスクが高まり、保険金支払いが増えるという構図が描けるからだ。
結論を急ぐと、日生が選んだ戦略は「据え置き」だった。より正確に言うならば、さまざまな情報によると「据え置きの公算大」だ。3月下旬時点になっても、生保各社は正式な発表を控え続ける。医療保険と一口に言っても、商品は多様であり、加入年齢によっても事情は変わってくる可能性があるからだ。
そう断ったうえで話を続けると、日生にもまして意外だったのが、日生を脅かす最大勢力と言える第一生命保険。保険料「引き下げ」だからだ。最大5%幅の値下げが見込まれる。では、その次の国内勢力と言える明治安田生命保険、住友生命保険はどうかというと、これもまた面白い。「保留」だ。
明治安田は、「MYイノベーション2020」という名のプロジェクトを走らせている。デジタル革命(デジタライゼーション)を駆使して、健康、医療分野で新たな世界を切り開く路線である。つまり、医療保険商品について全面的な変更を予告済みなのだ。同社が据えたゴールは2020年3月である。
一方、住友生命は提携先の南アフリカの金融サービス会社ディスカバリーなどと、現在、やはり、「IoTを活用した健康情報・健康増進活動のデータ収集プラットフォーム」を構築し、同社の健康増進支援プログラムをわが国に投入しようとしている。これによって、医療保険のラインアップはガラリと変わるという。ゴールはこの夏なのだ。
この2社は従来のレースから新たなレースに向かおうと準備していることになる。だが、違う見方をすれば、すでに今年4月の「標準生命表」の改定が射程圏にあり、医療保険料の改定を巡る大いくさが不可避的になってきていた情勢下で、商品の全面改定を理由に、いち早く「洞ケ峠」を決め込んだように見えなくもない。要するに、激しい競争を繰り広げている生保業界は体力勝負のみならず、知恵の戦いも激化しているのだ。