定年後も人生は続くのに、仕事は60歳から65歳で終了というのは金銭面のみならず精神面にも厳しい。50代で「シニア起業」という選択をした人の声を聞いた。
「願わくば75歳までは働きたいと思っています」
と語るのは55歳でジュエリー・生活雑貨の企画・販売、イベント会社「オフィスTARU」を起こした上水樽文明さん。転職や副業と違い、経営者になってしまえば、何歳まで働くかは自分自身で自由に決められるのが起業のいいところだ。
しかし、いきなりの起業だと、事業を続けていけるかどうかのリスクは高まる。
「確かに起業当初は、会社を離れた自分をどの程度、仕入れ先の方々などが受け入れてくださるか、不安もありました」
起業前、33年間勤めた京セラでは主に宝飾応用商品事業部に在籍していた。会社員としての職務の延長線上での起業だったこともあり、創業4年目にして、大企業の会社員の年収程度の年商を得られるようになった。
「今、力を入れているのは生まれてくるお孫さんへの贈り物としてのジュエリー提案です。完成した商品を納品する際、お客様に満面の笑みで喜んでもらえる瞬間は本当に幸せ」
これまで「おもてなしツアー」と題して、顧客を上水樽さんの地元の九州旅行(鹿児島県)に無料招待したこともある。感謝と社会貢献の意識があってこその起業である。
東京・神奈川で計5千社以上にレンタルオフィス「アントレサロン」を展開するほか、起業支援や起業家交流会を主催する銀座セカンドライフ代表取締役の片桐実央さんに話を聞いた。
「50代、60代のシニア起業では前職の経験を生かして、前職と同じ仕事をされている方が7~8割ですね。残りの2、3割が前職での技術や資格を生かしたコンサルタント業や人脈を生かした営業支援などの分野で起業されています」
その成否を分けるのは、やはり前職でもらっていた年収レベルの年商を起業後に稼げるかどうか。1年で達成できれば大成功、3年ぐらいをメドに達成する人が多いという。